奥さん、マンガ家です
ハンゾー:えーみんなが待ってたおきらく忍者ハンゾーくんです。なんか不本意ながらもオレたちの生みの親である山中の自己紹介に付き合うことになったんだけど、自己紹介に他人の手、かりるか?普通。
山中:しゃ〜ないやろ。わしみたいなタイプが、ただ経歴語ったら自慢話みたいでやらしいやんけ。
ハンゾー:そうかぁ? カマドウマの一生のが、まだ栄光に満ちてると思うけどなぁ。

黎明編
ハ:えーっと、んじゃ、最初っからいこーか、山中、お前、誕まれは?
山:しらん。俺が気がついた時にはこの世におった。
ハ:……そらまぁ大抵の奴ぁそうだろうけど。
山:一番古い記憶は……そやな。石どけた時か。
ハ:石?
山:うん、わしがでかい石、どかしたら下におったもんがワラワラ四方八方に散ってな。わーしもた思たで。
ハ:何をつまんないこと覚えてんだよ? で、それっていつくらいの話?
山:5歳の誕生祝いのあとやから、今から150億年くらい前か。
ハ:……つまり何か? おっさんが石どけてワラワラってのは、その、ビッグ・バンってやつか?
山:あー、物知らずがんな風にも言うなぁ。で、その次の記憶が&%$#&*`の*>&%#”と¥*&した時か。
ハ:なんだよそれ。
山:ワラワラのあとに最初に笑うた連中が使とった音声意思伝達手段やな。人類の発声器官で再現するんはちぃ難しいけど、受話器型のカプラーでひろたら、上記のよーな文字にならんこともない。で、その&%$#&*`やけど、これが笑うで〜。
ハ:ンな人類以外の笑い、理解したくねーよ。ホラも人類の範囲に止めといてくれよ。
山:つまらんこと言うなあ。どいつもこいつも。こないだもアジモフのおっさんが、今度出す「世界の年表」で、君の出てくるとこ、全部けずってええかとか訊いてきよるし。なんでも、わしの出てくるとこ書いたら、枚数が予定の80倍くらいになって、1万2千円で売れるか心配やのに、どんならんちゅうことらしいわ。まぁ、ハインラインのおっさんに昔の話、聞かしてた時も途中でアワふきよったからな。
ハ:そりゃそーだろ、オレだってアワの一つもふきたいもん。
山:しゃあない。ほな大阪に住んでからの話にしよか。
ハ:最初からそうしろよ! あームダに疲れた。
山:えーと、大阪で最初にしてた仕事はあれやな。アカシックファイルとかいうゴシップ紙の四コマ漫画。
ハ:……それを大阪でやっとったんかい! おっさん!!
山:大阪とベツレヘムとファティマは三大支社やがな。まー読者の少ない新聞でなー、わしの知ってる限り、どこぞの酔っぱらいが競馬欄、立ち読みに来とったんが唯一の読者やなぁ。
ハ:競馬欄……あるの?
山:あるっちゅーか、ほとんどそれやん。今で言うところの東スポみたいなもんやし。まー矢部ちゃんが趣味でやっとっただけの新聞やからな、本人と同じで下品なもんや。
ハ:矢部ちゃん?
山:おう、人使いの荒いやっちゃで。光あれ、ちゅーては人に電球買いに行かせるし、粘土こねて裸のおっさんのフィギュア造らすし。
ハ:おっさんが造ったのか!!
山:んにゃ。海洋堂に外注たのんだ。色塗ったんは中国やけどな。仕事荒うて白いのとか黒いのとか黄色いんとか、あとでもめるで思たけど、完成したときには矢部ちゃん、もう飽きとってな。そいつら全部、かざり棚からたたき出しよった。
ハ:……なんか長くなりそうだから、話、かえよう。山中、家族は?
山:あー、最初の子はマヤちゃんと作ったんやったな。腋の下プレイで。ちょっと肥えた子やったからブーちゃんとかブッタちゃんとか呼んどった。
ハ:最初の子ってこたぁ、次もいるんだよね? 何か聞かなくてわかるけど。
山:あー次男はな、不倫で作った子やから認知しとらんねん。どこぞの大工の嫁はんでな。ダンナにないしょで馬小屋で誕んだそうや。悪いことしたなぁ。キー坊キー坊いうてみんなに好かれとったで。
ハ:三男はアラブのどっかでこしらえたんじゃないだろうな?
山:いや、アラブに思い出は……あ、そうや、どこぞの砂漠で道に迷ってあら〜ちゅうとった時に頭に布を巻いたおっさんがへへーとか言うておがんどったけど、思い出ちゅうたらそんなもんか。
ハ:……なー、それってどうやったら今のさえねー漫画屋のお前につながるんだ?
山:あー、今は休暇中やねん。矢部ちゃんが千年ほど休みやるちゅうさかいな。まあ、いろいろ遊びつくしたんで最後に漫画家でもやろかなーと。
ハ:なんでいきなり漫画家かなぁ。
山:いや、一応経過はあるんよ。前は画家になろ思とったし。
ハ:へえ〜有名になった?
山:いや、途中で何をまちごうたか軍人の大将になってしもて。
ハ:もうええわい!
大阪立志編
ハ:こっからはホラにしてももうちっとまともに行くぞ!
山:生活をエンジョイでけんやっちゃな〜、ほな、まあ、軽う行こか、え〜と今の人生はたしか……
ハ:今の、とかはもういいってんだろ!
山:誕まれたんは東京オリンピックが記憶にのこらんころやな。大阪万博は覚えとる。浅間山山荘事件でネコジャラ市の11人が流れたんが人生最初の激怒やな。
ハ:なんだよ! その生い立ちはーっそんな人生の表し方ってあんのか?
山:そやかて、わしの人生なんか、こんなもんやもん。えーと、人生の転機はベレー帽かぶったおっさんが夢枕に立って、わし、そんな長うないねん、あとたのむわ。言うた時かなぁ。
ハ:お……お前、そんな神をも恐れん発言していいのか!?
山:それでわし、立派な人殺しになろ思て精一杯グレたんよ。
ハ:なんでそうなる!?
山:いや、ベレー帽かぶっとったから、てっきり大久保清やと。
ハ:そのまま刑務所まで行きゃ良かったんだ!
山:結局、そのベレーのおっさん、よう、思い出したら鼻、丸うてメガネしとってな。
ハ:バチ当たるぞ〜漫画の神様のバチ当たるぞ〜。
山:いや、わしも一時はその人やと思たんやけど、どうやらちがうらしい。
ハ:へ?
山:あの人が夢枕に立ったんはどうやら田中圭一んとこ……
ハ:バチ確定だ!! このやろーっ
京都風雲編
山:そのあとは勉強しに京都行ってな。
ハ:んで?
山:いや、それだけ。
ハ:なんで!?
山:勉強と名の付くことは覚えられん体質なんよ、たしか……大学の名前は最初が京都で最後が大学やったな。京都・大学か。
ハ:ウソをつけーっ
山:あれ、言葉が足らんのはウソとは言わんのよ。
ハ:お前が出たのは三流に毛と角と触手が生えた京都精華大学とか言うおもしろ大学じゃねーか! そこであの女とも出会うんだろ!!
山:あの女?……ミヤ蝶美・蝶子か。
ハ:誰がだれも覚えてねー三流漫才師の話、してんだよ! あの自称、世界一尊大なアシスタントのことだ!
山:だが、日本じゃあ二番目だ。
ハ:……一番目って誰なんだよ。
山:いや、言うてみただけ。
ハ:死なない寸前くらいの痛いことするぞ
山:……えーと……ゆう輝☆さんのこっちゃな。うん、マン研で出会うたんやけど、わしの本名知られてもうてな。それ以来逆らえん。
ハ:本名って?
山:わしの一族は本名知られた人間には逆らえんのよ。まあ、言うこと聞いとったらチョコレートくれるし。しゃーない一丁やったるかって
ハ:やれ大儀じゃな……
東京征服編
山:で、そのあとはいろいろあって現在に至るんやね。
ハ:そのいろいろってのは……いや、やめとく、くわしく聞きたいなんて死んでも思わんから。
山:いや、東京出てきてからのことは作品紹介のコーナーのがしゃべりやすいから。
ハ:オレはもうつきあわねーぞ! 誰か別のやつ、よんでこいよ!
山:ん〜〜〜お前以外のわしの主人公て、気楽に召喚でけんのやけどなぁ。ま、その辺の事情も次で言うてみよう。
ハ:オレは知らねーからなーっ!!
2001.9.6現在