生いたち

「影に生きるか光に死すか」

 クロカゲの記憶にある最初の言葉です。

 彼の誕まれについては他の忍者達同様、あまりはっきりしてはいませんが、その後の状況からとある地方の医師の家の誕まれだと推察されています。

 クロカゲは今で言う重度の紫外線アレルギーを持って誕まれた子供でした。
 生後の2年ほど、彼は生家の土蔵のような場所で何とか命をつないでいましたが、当時の民家では完全に光を遮る手段など無く、何度も危篤状態に陥り、父親ももはや医術に息子を救う術無しと判断しました。

 その人物がクロカゲの生家に呼ばれたのはそんな死の宣告より数日の後でした。

 無明洞のヤミオウ。忍の山に住む影忍の長。あらゆる光を断ってなお光の中に立つ術を心得足るこの怪人に、クロカゲの父は息子の命の一縷の望みをたくしたのです。


ヤミオウ。影から出て影に消える。

一般人からすれば妖怪と変わらない存在です。
弟子達に言わせれば妖怪の方がマシだそうです。


 ヤミオウは己を含め、生命への執着があまり無い人物でクロカゲにしてもその生死を自分が決めてやるような面倒なことは一切してくれません。

 むしろ、面倒だと思えば呼吸さえやめてしまうヤミオウの生命をつなぐために必死になるのは後のクロカゲの方でした。


元々、ヤミオウの中身がどんなモノかは隠鬼落斎ですら知りません。
ひょっとして食事も呼吸も必要じゃないのかも。


 ヤミオウに引き取られたクロカゲは物心つくまで「影の中」と呼ばれる、この世とは異なる空間で育てられました。当然、この世のものは光すら届かない世界です。住人はクロカゲと、ヤミオウの二人だけ。そのヤミオウすらクロカゲの成長につれ、影の中にいる時間が少なくなってゆきます。

 ただ一人、影に住むクロカゲは寂しさのあまり、自分の他にこの世界を成す唯一の存在「闇」に向かって話すことを覚えます。「闇」はクロカゲの言葉にざわめきうねり、時として優しく彼を包み込んでくれます。

「闇は生きている。私と闇は朋に生きている」

 クロカゲがそう悟った時、ヤミオウは彼の手を取り、はじめて光の世界への道を示したのです。


 数年ぶりにこの世に帰ってきたクロカゲでしたが、彼を包んでいるのは相変わらず「闇」でした。

 ただ、「闇」の向こうに目まいがするほどいろいろなものの気配があり、「闇」はうすくクロカゲ自身をおおっているだけであることがすぐに理解できました。


「ハタケ」「ダイコン」「ドロボー」


 さて、ここで「闇」について少し解説をしておきましょう。

 はるかな昔、まだこの国が大陸と地続きだったころ、丁度、日本と大陸をつなぐように「ホウライ」と呼ばれる国がありました。

「ホウライ」の人々は強く賢く、魔界の侵攻すらしりぞける力を持っていたと一部の研究者の間で語られています。


由比卍党の機械や学天則も実は「ホウライ」の技術が使われてたりします。
くわしくはショウセツの項で。


「闇」はその「ホウライ」文明のオーバーテクノロジーの産物で、擬似的な意識を持った亜空間の群体というのが一番近いのでしょうか。


ただし、影おくりの場合、消失地点と出現地点にクロカゲ本人から分離させた
「闇」を配置しておく必要があるので10Mが限界なのである。
影わたりは「闇」そのものを操作できるクロカゲが
「闇」をまとって移動するため、ほぼ自在に移動できる。
出現中の影を切られると「闇」による保護空間そのものが裂けるため、大ダメージとなるのだ。


 クロカゲやヤミオウたち影忍はこれに全身を包むことで空間を渡る力を身に付けているのです。

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